なぜ、私たちは「家事ラク」を求めるようになったのか
私たちの家づくり
2026/09/27
「家事ラク」という言葉を、住宅業界ではよく使います。
家事ラク動線。
家事ラク収納。
家事ラクキッチン。
今ではすっかり当たり前になった言葉ですが、考えてみると少し不思議です。
家事そのものは、ずっと昔からあったはず。
料理をして、洗濯をして、掃除をして、片付ける。
それなのに、なぜ今になって私たちは、こんなにも「家事をラクにすること」を求めるようになったのでしょう。
その背景には、家族の暮らし方が大きく変わったことがあります。
かつて日本では、「夫が働き、妻が家庭を守る」という家族像が一般的でした。
もちろん、すべての家庭がそうだったわけではありません。
けれど社会全体としては、家の中に「家事をする人」がいることを前提に、暮らしが組み立てられていた時代が長く続きました。
ところが、共働き家庭は増えていきます。
1997年には、共働き世帯の数が「夫が働き、妻が専業主婦」という世帯を上回りました。
家族の働き方は変わった。
でも、料理も洗濯も掃除もなくなったわけではありません。
むしろ仕事をしながら、子どもを迎えに行き、夕飯をつくり、お風呂に入れ、洗濯機を回し、翌日の準備をする。
一日の中に、やることがぎゅっと詰め込まれるようになりました。
そして興味深いのは、働き方が変わっても、家事の負担が同じように変わったわけではないことです。
2021年の調査では、6歳未満の子どもがいる共働き家庭でも、家事・育児などに使う時間の77.4%を妻が担っていました。男性の家事・育児時間は以前より増えているものの、まだ大きな差があります。
そう考えると、「家事ラク」という言葉が広がったのは、単なる住宅トレンドではないように思います。
家事をする時間が惜しくなったから。
というより、
家事以外にも、大切にしたい時間が増えたから。
なのではないでしょうか。

仕事もしたい。
子どもの話も聞きたい。
一緒にごはんを食べたい。
少しだけ本を読みたい。
好きな音楽を聴きたい。
夫婦で話したい。
たまには何もしないで、ソファに座っていたい。
私たちが欲しかったのは、「洗濯が3分早く終わる家」ではなくて、
その3分、5分、10分が積み重なった先にある、
自分たちらしく過ごせる時間だったのかもしれません。
だから、家事ラクな家を考えるとき。
キッチンから洗面所まで何歩なのか。
洗濯機から物干し場まで何メートルなのか。
もちろん、それも大切です。
でも、本当に考えたいのはその先です。
その家事が早く終わったあと、何をするのか。

子どもと絵本を読むかもしれない。
今日学校であったことを聞くかもしれない。
一緒に夕飯をつくるかもしれない。
庭で育てている植物を眺めるかもしれない。
子どもが突然、
「月って、どうして形が変わるの?」
なんて聞いてくるかもしれない。
そして一緒に図鑑を開く。
そういう時間は、「家事動線○m短縮」という数字には表れません。
でも、何十年も暮らしていく家を考えるなら、
もしかすると、そちらのほうが大切なのではないかと思うのです。
私たちは「家事ラクな家」をつくりたい。
でも、家事をしなくていい家を目指しているわけではありません。
料理だって、親子でやれば思い出になります。
洗濯物を畳みながら、子どもの話を聞く日だってある。
暮らしから家事を消したいわけではなくて、
家事だけで一日が終わってしまわない家にしたい。
その違いは、大きいと思っています。
家が暖かい。
地震に強い。
安心して眠れる。
まず、それが家として一番大切なこと。
そのうえで、毎日の小さな負担を減らしていく。
そして生まれた余白で、
本を読んだり、
音楽を聴いたり、
料理をしたり、
子どもと話したり、
季節を感じたりする。
そんな時間が少しずつ積み重なることで、
その家族らしい文化のようなものが生まれていくのかもしれません。
「家事ラク」という言葉の先にあるのは、
単なる「ラク」ではなく、
どう暮らしたいかを選べる余白。
私たちは、そんな余白まで考えながら、家をつくっていきたいと思っています。
大橋実加
広報担当
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